パニック障害は20~30代の男女に多く見られる事が多い病気です。しかし、まれに子供にもパニック障害が起こる場合があり、早い場合だと小学3年生くらいからパニック障害を患う児童がいます。そしてその数は増加する傾向にあるのです。
症状は大人のパニック障害と似ていて、呼吸の乱れや動悸、息切れ、吐き気などです。これは、過剰なストレスが原因でパニック障害が発症する事が多く、学校でのいじめが社会問題になるほど深刻化しているのも、この病気に深く影響していると言えるでしょう。
学校から帰ると自由に遊んでいた昔とは違い、塾などハードスケジュールをこなす児童が受験勉強に励む中での孤独感や劣等感、学校や塾以外での家庭環境の問題など様々な理由が発端となり患います。
子供のパニック障害の場合
子供のパニック障害の場合は、パニック発作を起こした場所を避ける広場恐怖が7割以上出るという事から不登校になってしまうケースが多く見られます。
子供の場合も大人と同じで薬物療法により治療を進めていきますが、パニック障害に有効なベンゾジアゼピン系の薬は勉強中の眠気や記憶の妨げになる事があることから、選択的セロトニン再取り込み阻害薬を用いる場合が多いです。
幼い頃にパニック障害を患う場合、遺伝も原因の一つとして考えられます。パニック障害になった親と子の発症危険率は18パーセントというデータもあります。
子供がパニック障害になってしまった場合、親がしっかりと子供の支えになり、症状に合わせて無理をさせないようにする事が大切です。
パニック障害の原因は幼児期につくられる
パニック障害の原因は幼児期につくられると言われています。もちろん確実な原因は判明されていないものの、可能性の高い原因の多くが幼児期につくられることが多いように言われているのです。
幼児期は自分を守ってくれるのは親だけです。その親が精神的な問題があったり、性格的な問題がある場合は特に子供にとっては不安なことがたくさんあります。
幼児期の不安とは親が離れてしまう、どこかへ行ってしまうということ以外ないと言えるほど強い影響があるのです。
例えば幼児期に○○ちゃんとケンカしても、そんなに強い解離不安は持ちません。でも、親がいなくなるということは命にかかわることであり、解離不安の大きな原因になるのです。
それほど子供は親から離れたら生きていけないか弱いものと言えます。幼児期に強い解離不安を心の傷として抱えて締った子供は、大人になったときにパニック障害を起こしやすいのも当然かも知れません。
赤ちゃんがハイハイをして動き回るときに、振り向いた先に親や保育園の先生などが、しっかり自分を見ていてくれるという安心感が、今後の子供の本来の自信につながるということが幼児教育の面でも言われています。
それほど幼児期は自分と自分を見守ってくれる人との関係がすべてなのです。そしてそのときの安心感が人生の中でずっと大人になっても自信の源になっていきます。
幼児期は自分を守ってくれる人がいるというだけで、心豊かにすくすく育つと言えます。
逆にもし心ない親の虐待などあったら、もうその子供の恐怖は大人になっても取れるものではありません。そういう意味でも大人の責任ということを、もう少し考えるようにしましょう。
そしてもしパニック障害を発症した人は、今の人生にそういう思いでは必要ないのだということも、自覚するといいのではないでしょうか。
「正体見たり枯れ尾花」という言葉がありますが、「パニック障害の正体を見たら、そんなことだったんだ」と思うことも大切かも知れません。あとは適切な治療を受ければ必ず乗り超えられるでしょう。
原因に親に怒られたときの恐怖があることも
子供にとっては、親は絶対であり、親に捨てられたら子供は死を意味する感覚をもっています。動物でもみんなある時期までは親から離れることは死を意味するわけです。
そこで親の態度も今後の子供のパニック障害には大きく影響を及ぼす可能性もあります。親が子供を叱ることはもちろんあり、それはしつけということで叱るわけです。
しかし子供は叱られてことで、親が自分を捨てるかも知れないという不安を持つようになります。
いくら親の愛のムチだったとしても、その解離不安は将来のパニック障害につながると考えられます。そこでどんなに親は子供を叱っても、「あなたを離さない」ということだけはしっかり伝えるような態度で叱りましょう。
例えば親が叱るときも、つい感情的になると「何でそんなことをするの? もうしらないから」と言ってしまいますが、子供は親に捨てられる不安を持ってしまいます。
でも叱るときに「○○ちゃんが大切だから叱るのよ」と一言添えるだけで、子供は捨てられるという解離不安を持たなくなります。このようなことの積み重ねが大きな違いとなるのです。
そういう意味からも親は感情的になりすぎてはいけないということです。もう少し大きくなると解離不安も、ちょっとしたことでは起らなくなります。特に幼児期には親の言葉や態度がとても重要になるようです。
そして1回のことでどうなるというものではなく、積み重ねで子供の心に擦り込まれていくわけですから、親も毎日の子供のしつけ自体を考えるようにしていきましょう。
もう小学校に入るころには親がそう簡単に自分を捨てるわけはないという確信が持てるようになります。その頃にはそこまで神経質にならなくとも、たまにはキツイ言葉もしつけの一つになるかも知れません。
そんなちょっとしたことの積み重ねには注意が必要です。小さい頃の子供は親がいなければ生きていけない恐怖を、いつも持っていることを忘れないようにしましょう。
パニック障害の原因は親にあることも
パニック障害の原因は解明されていませんが、少なくともその原因のきっかけになることがあります。そんな出来事の中に母親や父親が関係していることも案外あるようです。
パニック障害の前段階の「しとみしり」「内気」「はにかみ」「引っ込み思案」「臆病」を強く持っている子どもを行動抑制と言います。
普通の母親、父親の子供の20%のこのような行動抑制が見られます。しかしパニック障害を持った親の子供の80%が行動抑制を持っていると言われているのです。このことからこれらの行動抑制がパニック障害の基本的な精神的要因にあるのではないかと考えられています。
また幼児期の分離不安がパニック障害の基本にあるとも言われています。親からの虐待もそうですが、例えば共働き家庭で保育所に引き渡されるときの不安。幼稚園でも親から離れる恐怖で泣き叫ぶ子供もいます。
もちろんこのような子供であっても、慣れてしまえばいつまでも親を追うようなことはありません。そのときに子供の中で親からの分離不安をうまく乗り超えているか、どこかに不安が残っているかは大きいようです。
それが強く残っていると、大人になって何かストレスや不安があったときに、その分離不安がよみがえりパニック症状に陥る。一度陥ると、その苦しさに対する恐怖と不安が繰り返され、より大きくなっていくのではないでしょうか。
ドイツのパニック障害研究の第一人者でもあるゲッチンゲン大学のバンデロー教授は100人以上の健常者と、同じく100人以上のパニック障害患者の15歳までの子供時代のトラウマ調査をしました。
激しいトラウマを経験した人はパニック障害の70%近くであったこと。健常者では35%程度だったことからも倍の人がトラウマを持っていたのです。あるいはトラウマととらえているということが言えます。
大人になってからの大きな原因はやはり死別、離別などに関係することが多いようです。愛する人との離別、死別、また裏切りなどが原因になっていますが、それもある意味では要因であり、本当の原因は小さい頃の体験にあるのかも知れません。
パニック障害の子供への対応
パニック障害の子供への対応と、パニック障害にならないための注意などを考えてみましょう。特に小学生、中学生、高校生などの場合、受験などによる親の期待の重さや、いじめなども原因になります。
いじめがあっても話し合える関係を作るようにしたり、親の重すぎる期待を感じさせるようなことは避けましょう。
子供にとって学校も家も選ぶことができない、とても大きなストレスの場でもあることを家族が理解することも大切です。
遺伝は多少あると言われていますが、性格的な遺伝によってパニック障害を発症しやすいということはおおいに考えられることではないでしょうか。
感受性が強かったり、感情の起伏が強かったり、不安を感じやすい性格だったり、必要以上に几帳面だったり、恐がりだったりということは遺伝もあり、このような性格を持っていると感じたときには親は注意をして見てあげることが大切です。
パニック障害を発症してしまったときの親ができることは、まず一つは食事などの食べ物の管理があります。ファーストフードや加工食品、外食などが多い場合はビタミン、ミネラルなどをしっかり摂ることができません。
脳、体、神経などは栄養素がとても重要です。しっかり栄養のバランスの摂れた食事を食べさせることが親のすべきことではないでしょうか。糖分の摂りすぎも注意するようにして、おやつなども手作りするといいでしょう。
成長ホルモンの分泌をしっかり守ることも大切です。大体午後10時から午前2時までが、特に分泌の多い時間です。この時間にしっかり眠れるように指導しましょう。
勉強や習い事を中心にしていると、この時間帯に眠ることが出来ない場合も。しかしパニック障害の予防や、発症してからも睡眠時間は重要と考えましょう。
子供のストレスを取ることも大切です。親は良かれと思っている言動も、子供のストレスになっている場合もあります。
甘やかすということではなく、子供の心の声をしっかり聞いて向き合うという姿勢を親が持つことが大切です。そしてもちろん病院に行って治療をしていくことが基本となります。